「じゃあ、次。席替えっていう提案ですけど。だれか具体的に意見のあるひと、手を上げて」
 席替えか。
 みんなとは離れたくないけど。
 この、背中の重たい荷物。
「はい!」
 はいったら、石川。
「あぁん? 相田(あいだ)、おまえ意見なんてあるの?」
 あっちゃ悪いか。
「番号札を作って、順に引いたら?」
「だれが作るのよ。めんどくせぇ。却下(きゃっか)
「石川ねぇ、進行係が自分の意見を言ってどうすんのよ。決を取ってよ、ちゃんと」
「ほかにだれか意見は」
 やる気あんのか、おまえは。
「は…はい!」
 めずらしい。内山くんだ。
 いつも自分から手を上げるなんてことしないのに。
「ほい、内山」
「ぼ…ぼくは、このままで、いいです」
 いやだ、くちごもっちゃって。
「ぼくも目が悪いから、このままでいいんだけどなぁ」
「お、佐々木。よし。内山と佐々木は席替え反対ね。ほかに、反対は?」
 石川ぁ、なんなのそれ。
 どうして注意しないのよ、佐々木は手を上げてないじゃん。
「はい、委員長。これから寒くなるだろ? オレ、窓際はイヤなわけよ。これでいいよ」
「うん。なるほど。高野も反対っと」
 とたんにガヤガヤする教室で石川はニヤリと笑った。
 あたしは見たぞ。
 まさか……。
 だめだ。河島は居眠りしてるし。
 中井は…いない。
「なんだぁ。だれも具体案は、ないわけ?」
 おいおい石川、あたしの意見はどうなる。
「だったら暫定(ざんてい)案として、オレが提案するけどいいな」
 いいわけあるか、独裁者。
 手回しをしてたな?
 見え見えだぞ。