「本当に有実(ゆみ)、真っ黒になったわねぇ」
 あたしが黒いのはランで日焼けするからなんだよう。
 頭脳派の先輩たちはちゃんとUVケアしてて、あたしの短パン焼けは小学生の弟とおなじだって母さんにまであきれられる。
「大海ちゃんも、元気そうでよかった」
 体育館での始業式のあと、ぞろぞろと教室に向かいながら、大海ちゃんと新学期のお決まり挨拶を楽しんでいると、うしろからひとの頭をなでるやつ。
「なんだ。あんたたち、てんで仲いいじゃん、つまんないの」
 井森だ。
 こちらもまったく日に焼けていない。頭脳派か。
「仲が良くて、悪い?」
「えー。だってあんたたち、ライバルじゃん」
「ライバル?」
 大海ちゃんが目に疑問をいっぱい浮かべてあたしを見る。
 井森!
 ギロッとにらんでも、井森の口元はおもしろそうにゆがんだま
 絶対に引かない気配に、あたしは大海ちゃんの腕を引っぱった。
「ねぇ、有実。ライバルって…なんの?」
 大海ちゃんたら。
「いいの、いいの。井森の言うことなんか真面目に聞かなくて」
「でも――…」
 あたしに腕を引かれながら、ちらちら井森を振り返る大海ちゃん。
 こんなとき困るのは、身体の弱い子を走らせるわけにはいかないこと。
「大海、あんた、赤根(あかね)くんのこと、好きなんでしょ?」
 うっわぁぁぁぁ。
「井森!」
 ど直球。