第4章・7月『ブレイクショット』

「おーし、ラスト1周」

ぜっぜっはっはっ 
ぜっぜっはっはっ

 クマのやつ、自分は木陰でノビてるくせに、生徒に対する要求はキツイんだから。
「ファイットォー!」
「ファイッ!」「ファイ!」
 ごほごほ。
 気まぐれに声をかけるなぁ!
 こっちはラグビー部があげる砂ぼこりで、…うぇっぷ。
 ごほごほごほ。
相田(あいだ)、遅れてるよっ」
 あっあっ、先輩、待って、待って。

ゼッゼッ ハッハッ 
ゼッゼッ ハッハッ

「…っくしょ、こんなに走れなくなってるなん…て」
 あの日。
 あの球技大会の日。
 あたしは生まれて初めて学校をズル休みした。
 3日間、ふとんの中で、考えて、考えて。
 好きでもどうにもならないことがあると知った今なら、どうにかなることは、ちゃんとしようって。
 なにもすることがない苦しさは、自分自身で解決できるもんね。
 (ばく)を好きでもどうにもならない。
 でもバレーボールなら。
 バレーボールが好きなら、あたしにもまだできることがある。