相田(あいだ)はバレーボール」
「ちょ…。センセ」
 なにを言い出すの?
 センセだって見てたでしょ。
 あたしは最初の体育の授業以来、三中のユニフォームは着ていない。
 体育の時間もバレーのときは、さりげなくボールのこない位置に移動して、だらだらと時間をすごしているだけだ。
 弱虫っていわれるかもしれないけど、真面目にやって、また恥をかくのはいやだ。つらすぎる。
「石川、相田はバレー、決定ね」
「センセッッ」
 ほとんど悲鳴になった。
 中井は初めて見るキツイ目であたしを見た。
「相田はバレー!」
 なんでっ?
 なんでよ。

 その日のLHRはヒサンだった。
 涙がこぼれないようにするので精いっぱい。
 チャイムが鳴ると同時にダッシュで教室を出た。
 どの組もまだ白熱した議論が続いている。
 だれもいない廊下。
 走ってもだれにもとがめられない、ひとりぼっち。
 走って、走って、走って、走る。
 校則をやぶるくらいしか、今のあたしのくやしい気持ちをあらわす方法が思いつけなくて。

 * * *

 それから数日、クラスの自主練習には、あたしは参加しなかった。