「いえ先生。参加するからには勝ちますよ」
 ふん! と鼻息荒い石川に、さすがに失笑ももれるけど。
「進行係が興奮してどうすんのよ」
 ぼそっとつぶやいたあたしに
「まったくだ」
 ぼそっと返事をする(ばく)は、そもそも自分を集団の一員だなんて思っていないだろうし。
 よくわかんない。
 でも、あたしがこの議題に興味がないのは、許してほしいな。
「ねぇ、なに読んでるの?」
 振り向くと麦は、あたしの期待通り、進行には無関心に本を読んでいた。
「前。石川がにらんでる」
「え?」
「こら相田(あいだ)ぁ! おまえちゃんと聞いてるのかぁ!」
 教壇から乗り出して叫ぶのはやめてよ、鼓膜が破れるわ。
「とにかく、おまえから希望を言って」
 はぁあ?
 また出席番号順なの?
 んもう。
「じゃ卓球」
「ちょっと待ったぁ」
 なんなんだよう、もう。
 中井の声だ。
 クラス全員が教室のうしろすみから発せられたその声に振り向いた。
 もちろんあたしも。