第3章・6月『恋?』

 いよいよ本格的に始まる油彩の授業。
 課題の静物画は描く場所を選ぶところから始まった。
 ぐるーっと周りを歩いて。
 あたしが『ここだ!』と選んだイーゼルに、あたしの頭のうえからタッチしたのは(ばく)だった。
「うん。センスは悪くない」
 なにそれ。
 きみと同じ場所を選んだから?
 何様?
 ――――バク様か。
「だけどここ、ワインボトルがメインになるよ。大丈夫?」
「だ…、だいじょーぶよ!」
 …と、胸を張った先週のあたし、求む猛反省。


 うーん。
「なんか、ちがう」
 こんなのじゃないんだけどなぁ、イメージだけは。
「なんかどころか、全部ちがうっしょ、きみのは」
 ぼそっと言ったのは麦。
「うわっ、失礼なやつ」
「…………」
 返事なし。
 はいはい、へたくそにかまってる時間はないですね。
 うーん。うーん。