第2章・5月『変!』

「うぅみい、相田(あいだ)、うぅみいー」
 井森がわめいてる。
「うみじゃないっ、ゆみ! ったく、何度言ったらわかるのよ」
「いーじゃん、うみで。かわいいよ」
 あぁ、もう。
「今度はなに」
「へへ。うみちゃーん、井森さんに、リーダーの訳、見せてよ」
「却下」
「そーんなぁ、冷たいこと言わないでさ。友だちじゃん、ね」
 だれが友だちだ。

 5月も連休を過ぎると最初のころの緊張もなくなって、やる子と、やらない子がきっちり分かれてくる。
 でも、入学式の日の宣言どおり、先生はやらない子は置き去りだ。
「あたしは、あんたのためを思って貸してあげないの。友だちだからね」
 にっこり。
 指されて泣け。泣いて悟れ。
 自由ってオソロシイんだってことを。
「そんなこと言わないで。お願い」
「やだ」
 だって英語も数学もA組よりD組のほうが早いんだもん。
 あたしは絶対、井森からノートを借りられないのに、不公平じゃん。
「今度、現国のノート見せるからぁ」
「なにそれ。漢字に全部ルビふってくれるって? 小学生か、あたしは」
「ぷっ」
 うしろの席でふきだすやつ。
 ひとの話を盗み聞きして、赤根(あかね)ぇ。