ずんずん大またでコートを出るあたしに、井森がスキップでついてきて。
「生理?」
 ささやいた。
「…………」
 なんだって、こんな子の演技に男はみんな引っかかるんだ。
 やつあたりだって、わかってる。
 わかってるけど井森をにらみつけて、即席チームを作っているクマの目が届かないコートのすみで体育座り。
 空を見上げて気分直し。
 ため息をついてもモヤモヤは晴れなくて。
 元気回復のためにひとり言。
「あーもう。バレーもだめなら、あたしなんて本当に、なんの取り柄もないよ」
「それじゃ、絵でも描きますか?」
 えっ?
 あわててあたりを見回すと、いた、いた。
 コートを囲むフェンスの向こう、桜の樹の下に。
 いつの間にか中井が、例の白衣を着て、スケッチブック片手に立っていた。
相田(あいだ)さ、選択科目、美術を取ったでしょ」
「はぁ……」
 あきらかに授業をさぼっている生徒に、そんなにナチュラルに話しかけてよいのです?
 中井が風でほつれておでこにかかってきた髪を右手でかきあげた。
「あっ!」
 そのときやっと、入学式の日からどこかに引っかかってモヤっていたことの答えを発見。