「きゃー、やったね、相田。彼、やっさしい。じゃ、よろしくお願いしまーす」
あ…んた、ねぇ。
意外なことに軽々とカゴを持ってグラウンドに向かう赤根たちの背中に、ニッコニコで手を振っている井森に聞こえるようにわざとらしくため息をついた。
「井森さんね、こういうのあたし、好きじゃない」
特に赤根に借りを作るなんてジョーダンじゃない。
「先生だって、持てないと思ったら、ふたりで持って来いなんて言わないよ」
「あらそう? 男子がふたり先に行ったのを見たから、先生はあたしたちにふたりで行けって言ったと思うわよ」
「え…」
考えてしまった。
たしかに、そうかもしれないって。
この子、やっぱり、見た目はどうでも頭はいい?
「それに、先生の思惑通り、おたくのクラスの美少年が、手伝ってくれるって言ったじゃん」
びしょーねん!
そりゃダレのこと?
あいつはただのイヤミ大将だ。
「とにかく。男子にああいうの、あたしのまえではやめて」
「ふーん。相田って、小さいのに男前ねぇ」
「…………」
言ったな。
背が低いって、言ったな。
あたしが最も気にしていることを――言ったわね?
両脚をふんばって反論態勢にはいったあたしに目ざとく気づいた井森が、にっこり笑ってあたしの頭をなでた。
「かーわいい」
「…………っ!」
どっか――ん。
頭のどこかで爆発が起きたみたいな怒りに拳を握ったとき、井森はあたしを無視してうしろのだれかに手を振っていた。



