片思いー終わる日はじめる日ー

 やっぱり聞くのは……
「よそう、かな……。ヘヘ。…いいや。なんか、どうせ、ろくでもないことなんでしょ。もういい。パス、パス」
 (ばく)とショーウインドウの間をすりぬけて、うんと元気に見えるようにリュックを振り回して前進、前進。
「待てよ、有実(ゆみ)
 待たないよーだ。
「おまえって、さ」
「だめっ。…聞かない!」
 ちゃんと言ったのに、それはあっという間。
 うしろからすぅーっと麦の髪の匂いが肩の上に寄ってきて。
 麦の唇はあたしのすぐ耳元。
「男とつきあったこと、ないんだろ?」
 うっわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 だからイヤ。
 だから、こいつってぇぇぇ。
 ぽわんと胸に火がついて。
 ダッシュで逃走。
「有実!」
「…やだ、離せばか! は…なせってばっ!」
「もう逃げないって言った」
 言ってない、言ってない!
「やっぱ図星ぃ。…あはははは」
 も、やだ。
 離して、離して!
「かーわいい」
 ん、もおおおおおおおおお。

 知ってたけど。
 ちょっとオトナかなって思ってたけど。
「いじわる!」
「うん、いじわる」
 すました顔でぇ。


 右、左、右、左。
 おそろいのリズムを刻みながら、あたしの白いスニーカーと麦の黒いデザートブーツがダンスする。
「…………」
「…………」
 こんなので、いいのかなぁ。
 わからないから、ただとなりを歩くけど。
 麦はときどき人ごみをすたすた進んで、わざとあたしを困らせる。
 しかたないから、あたしは麦のコートの(ひじ)をちょっとつまんで。
「まぁ、いいか」…って麦が言って。
「もう、ほんとにっ」…ってあたしが言って。

 あとはふたりして、黙って黙って、ジングルベルの街。

―END―


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読了ありがとうございました。
☆みやざきしずる☆