片思いー終わる日はじめる日ー

 あー、ソースのいい匂いがしてきた。
「食べる前から、そんなこと言ってると、みんな食べられちゃうぞ、大海ちゃん」
「ひと切れくらい残してね」
「アイ、サー」
 あたしは、この間4人で見た映画のヒーローみたいにかっこよく言ったつもりだったのに。
「Aye, ma'am」
 向かいの席で鉄板にうつむきながら(ばく)が言って。
「そうですね」って伊勢くんがうなずくから。
「んもう! 細かい」「細けぇよ」
 あたしと啓介がふくれて。
 楽しいね。
 だれが勉強ができるとか、だれができないとか。
 そんなことでビクビク縮こまっていなくていい関係って楽しい。
 こんなふうに、ずっといたいな。みんなと。


「あーもう、おなかいっぱい」
 帰宅組のうっちゃまん、啓介、大海ちゃんと別れてポプラ並木を学校へ。
「あんなに食べるから内山は太るんですよ」
「えー、伊勢くんだって、そんなやせてんのにすっごく食べるじゃない」
「ぼくは頭にいくんです」
「うわ。言ってやろ一っと」
「伊勢、休みの間に、すこし将棋の定石(じょうせき)、勉強しとくからな。3学期は、伊勢にばっかり勝たせないぞ」
「おっと、そうだ。ぼくは早く部室に行って定石本の整理をしなけりゃ」
 えっ?
「いやぁ、1年生は大変ですよ。――では」
 走り去るうしろ姿に茫然(ぼうぜん)
「あれ、気を使ってるつもりだぜ」
 あたしもそうかも…とは思ったけど。
 さらっと言うか、そういうことを。
「…………」
 返事のしようが、ないでしょ。