片思いー終わる日はじめる日ー

 美術の時間に机に向かって筆と墨なんて、あたしたちは困惑するけど、中井のほうは退屈らしい。
 最初に『カリキュラムってやつなのでぇ』と投げやりに言ったとおり、白衣のポケットから両手が出てくることはない。
赤根(あかね)、さぼるんじゃなーい」
 (ばく)をかまうくらいだから、相当つまらないんだろう。
 麦も苦笑してる。
 いいなぁ。
 すごくいい。
「わ、佐々木、それじゃ松じゃなくて、クリスマスツリーだよ」
 中井も麦も幸せになったのかな。
「あーあ」
 あたしの松もなんだか、くねくね。
「好きなんだけどなぁ……」

「えー、相田(あいだ)さん、こんなの気にいったの?」
「やだもう。おれ泣きたい」
「おれもー。墨って臭くね?」

 ははははは。

 みんなの集中を切らしたあたしをちょっとにらんで、中井がぽん! と手を打った。
「そうだ! 佐々木ナイス! クリスマスカード作ろうか、みんな。授業あと何回だ――――うん、あと4時間あるじゃない。ね。もうすぐ、クリスマスだし。こんなの1回でやめてさぁ」
 うわ。
 それはちょっとセンセとしてどうなの、中井。
「せんせーえ!」
「んー? なんだぁ、相田」
「その前にあたしたちは、2学期末の試験があるんですよう。ひとりで浮かれてないでくださいねえ」
「そんなのテキトー、テキトー。16歳のクリスマスは二度とはこないんだぞぉ」
 この軽さ。
「先生、オレはまだ、15です」
 このかたさ。
 石川ぁ、あんた、やっぱりA型だわ。
 でも――。
 みんな、いつの間にか自信をもって素顔になっていく。
 だけど、あたしは――。