「…そんな、ゆ、するな…。吐き、そ!」
 (ばく)の指があたしの腕をつかむ。
「アイ、ダ……い、た…い、おれ……」
 麦の身体がガクン…とあたしにもたれかかってきて。
「麦! バク! バクッ!」
 どうしよう。どうしよう!
 救急車!
「ひゃ…ひゃくとーばん」
「…そ、れは、警察だ、ばか……」
 麦がなにか言ってる。
 でもあたしにはもうなにも聞こえない。
 やだ、こわい。
 麦。
 麦!
相田(あいだ)? ――ァ、カネ! どうしたのっ!?」
 そのとき角を曲がって、あたしたちしかいない遊歩道に入って来たのは中井。
「先生っ!」
 お願い。
 麦を助けてっ!