「中間試験が終わればぁ、ブンブン、ぶんぶん、文化祭ぃーっと」
「しい一っ!」
 うわ。
 ごめんなさい、司書センセ。
 声に出てました?
 ふと見た腕時計。
 どうして1時間もたってないのに、あきちゃうんだろうなぁ。
 あたしの決意って、お豆腐級ね。
 せめて焼き豆腐くらいはかたくしないと。
「焼き豆腐かぁ……」
 今晩のごはんはなんだろう。
 机に頬杖をついて暮れてきた空をぼーっとながめてしまうあたり、もう帰ったほうがいいのかも。
「――――ぁ」
 窓から見える芸術棟の角部屋、美術室に明かりが点いている。
 中井かな? (ばく)かな?
 石川は麦に、いっしょに帰ろうって誘わなかったのかな?

 体育祭が終わってから、石川と麦は仲がいい。
 どちらも見えるところに(なぐ)り合いのアザを残したまま、寄せた机でみんなとお弁当を食べたりして。
 麦といても石川のバカ笑いは聞こえるし。
 男子って、わかんない。
 石川も、わかんない。
 あいつ、てっきりあたしのこと、…キなんだと思ったのに。
「ひぇぇぇぇぇぇぇ!」
「しいいいいいっ!」
 はい、またまたスミマセン、司書センセ。
 うわあああん。
 なに考えてるの。
 あたしってばなんて、いやな子なのよぅ。
「…………」
 でも。
 でもね。