帰り支度を終えて、たぶんあたしを待っていてくれた大海ちゃんと、言葉は悪いけど、たぶん待ち構えていた石川を華麗にスルー。
「ちょっと、うみ!?」
「バイバイ」
 廊下ですれちがった井森もかわして全速力。
 世の中には強制されなくても5時間も勉強できる猛者(もさ)がおいでです。
 あたしだってバレーの練習なら5時間だってがんばれるんだから――いや、たぶんだけど――勉強だってやればできる。…はず。

 落ちこぼれは拾ってもらえない学校で、部活なんかできる立場じゃないのはわかっていたのにバレーボールを選んでしまった。
 だったら、やれることはやらなくちゃ。


 せきばらいも恥ずかしい静かな閲覧室で、学校所蔵のりっぱな辞書を片手に古文の教科書とにらめっこ。
「未然、連用、終止、連体、已然、命令…っとな」
 諸君は歌詞ならおぼえられるんでしょ。とカッパ河島がお経みたいに唱えて、覚えろと命令してきた動詞の活用。
 ぶつぶつつぶやきながら書き写していたら、いつのまにかすべてが歌になってしまうのはあたりまえ?