第7章・11月『みんな 大好き』

「あーっという間に、また中間試験ですねぇ」
 帰りの学活が終わって騒がしい教室で、まだ温かいヒーターの上に手をかざしながら、もたもたテスト日程を写していると、寒そうに身体を縮めた伊勢くんも、ヒーターに両手をかざしにやってきた。
「いやぁねぇ、余裕のひとは。あたしなんか、も、こーよ。こー」
相田(あいだ)さん……。それは、なにをやってんです?」
 見ればわかるでしょ、伊勢くん。
 バンザイだよぅ。お手上げ。
「あたし、どんどん頭が悪くなるのよぅ。バレーをはじめてから」
「うーん。言わんとすることは、勉強時間が減った、ですかね?」
 言いわけはしちゃダメなんだろうけどねぇ。
「伊勢くん、どのくらいやってんの?」
「ぼく、わりと遠距離通学なので――。電車のなかも使って5時間…くらい?」
「ごじかん!?」
「予習だけで3時間くらいかかっちゃいますもんね」
 よ…予習すか。
 さーせん。
 めまいが……。
「あたし今日、ちょっと…、ガッコの図書館で使いやすそうな辞書を探してみますデス……。井森が来たらそうお伝えくださいまし」
「そうですか。自分にあった辞書は必要ですね。がんばって」
 はい。
「あら、有実(ゆみ)?」「おい。有実!」
 机から鞄をひったくるようにして廊下に走り出たあたしに、みなさんが驚かれるのもわかりますが。
 それどころじゃございません。