「きゃ――っ!」「うおぉお!」
 教室中からあがった悲鳴。
 ガタガタガターン!
 机や椅子が倒れる音に息が止まって。
 目の前のものが何重にもブレたとき、スローモーションみたいに、石川が(ばく)になぐりかかるのが見えた。
「や…めて! やめてっっ!」
 大海ちゃんが、めちゃくちゃになった机の間で悲鳴をあげてる。
「ふたりとも、落ち着いて!」
 伊勢くんが、止めに入って黒板までとばされた。
 うっちゃまんは椅子といっしょに床にころがって、頭をかかえてる。

「石川やめろ!」
赤根(あかね)をおさえろ、だれかっ」

 ……クラス中大騒ぎなのに。
 あたしはひとり、キーンと頭をつんざく耳鳴りだけを感じながら、台風の実況中継をしているアナウンサーのように場違いな異物だった。