「まさか枕投げるとは思わなかったけどね。あれは最高だったな」


ヤマジ君はさっきのシーンを思い出したのか、肩を震わせて笑ってる。



「グスッ……」


あたしは鼻をすすった。


「もぉ! ヤマジ君のアホぉ……。そんなに笑うことないやん! だって……枕ぐらいしか投げられるものがなかってんもん!」



――ポンッ


ヤマジ君の手があたしの頭の上に乗った。


そしてにっこり微笑むと、まだ涙の乾かないあたしの目を覗き込む。



「ありがと。……桜田門さん」


「ヤマジ君……」



「桜田なんですけど……。(わざと間違ってるの?)」と言いかけたあたしの言葉は、ドアの開けられる音で掻き消された。



あたし達二人は、そちらへ視線を送る。


そこには半分ぐらい開いたドアからこちらを覗きこむ人物がいた。