「えっ……」


思いもしなかった答えにあたしはひるむ。



「いいよ」


ヤマジ君は口の端を上げてそう言うと、体ごとずいっとあたしに近づいた。




その表情はいつもの天使のような無垢な顔でもなければ、少女漫画に出てくるような王子様でもなかった。


あたしはその時初めて、ヤマジ君を生身の“男”なんだと実感した。


顔を傾けて軽く瞼を伏せたヤマジ君の顔がだんだん近づいてくる。



あたしの心臓は今にも口から出そうなほどバクバクと激しく動き出す。



ヤマジ君の香りがして、サラサラの前髪があたしの頬に触れる。


あたしはどうしたらいいかわからず目を閉じることすらできない。


そしてその唇が触れそうになったその瞬間……