驚いたあたしは、立ち上がると、ベッドの端に腰掛けた。

ヤマジ君にもっと近づいて、彼の話をちゃんと聞いてみたくなったのだ。



「まぁ、例えばの話だけどね。心のこもってないキスにどれほどの意味があんのかな? 無理やりしたって、相手の気持ちを手に入れることなんてできないでしょ?」


違うよ……ヤマジ君。


ヤマジ君にとってそうだとしても、相手に特別な感情があれば、それはやっぱり特別な意味を持つキスなんだよ。


姫子だって、だからキスしたかったんだと思う。


ヤマジ君に触れたかったんだと思う。



あたしはポツリと呟く。


「じゃ、ヤマジ君はあたしにもキスできるっていうの?」


特別な意味を持たないキスを……。


ヤマジ君は一瞬目を丸くしたかと思ったら、小首を傾げてあたしの目を覗き込む。





「キスしたいの? オレと」