「へ? 何?」


キョトンと首を傾げるあたしの顔に工藤聡史までが注目する。


「鼻血出てんで」


へ?


ぷぎゃ。

慌てて鼻の下に手をやって確認すると、指先が真っ赤に染まっていた。



「大丈夫……? 桜谷さん?」


心配そうにあたしの顔を覗き込むヤマジ君の顔が霞んで見えた。


「うん。大丈夫」


「桜田ですけど……」と呟いたつもりだったけど、きっとそれは声になっていなかったと思う。


やがてどんどん視界が暗くなっていき……真っ暗になるころ、あたしの意識も遠のいていった。


倒れかけたあたしを、誰かが抱きとめてくれたのだけはわかったけど。