「……どんな歌にしよう」
漸く震えが落ち着いて、一人ごちる。
アヴェイラがグリスノートの前で歌う歌。……アヴェイラからグリスノートに送る歌だ。
本当は恋の歌、ラブソングにしたいけれど、あからさまな歌詞だとアヴェイラは拒否しそうだ。
「うーーん」
ラブソングは実はあまり作ったことがなかった。
自分の初恋が遅かったのもある。しかも気づいたときにはもう遅くて、そんな気持ちを歌にはできなかった。歌にしようとも思わなかった。
でもドナの前で歌った時には自然と恋の歌になっていた。
きっとドナの気持ちと王子の気持ち両方が痛いほどに伝わっていたからだ。
(そうだ。まずはアヴェイラにもっとグリスノートの話を聞かなきゃ)
そんなときガチャと扉が開く音がして反射的に立ち上がる。アヴェイラが戻ってきたみたいだ。
「すまないね、なかなか航路が決まらなくてさ。でも3日後にはアピアチェーレの港に着きそうだよ」
「良かった! じゃあ3日間しっかり歌の練習しなきゃだね!」
「あぁ」
アヴェイラはやる気十分というふうに頷いた。



