My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】



 でも彼女は特に気を悪くした様子なく、手を合わせたまま続けた。

「さっきのが“歌”なんだろ? あたしもあんな歌を使いたいんだよ」
「なんで、歌を……?」

 歌を教えるのは良い。むしろこの世界の人に歌を知ってもらえるなら喜んで教えたい。
 フェルクレールトで子供たちに歌を教えたあの時の興奮が思い出された。
 ……でも、海賊である彼女が歌を“使いたい”なんて、理由が気になってしまう。
 もし歌を悪いことに使おうというなら、絶対に教えたくはない。

 するとアヴェイラは私から視線を外しぎゅっと眉を寄せた。

「グレイスって鳥がいただろ? あいつのとこに」

(グレイス?)

 グリスノートの肩に乗る可愛い鳥グレイスを思い浮かべながら私は頷く。

「いました、けど……」
「真似しようとしても、うまく出来なくてさ」
「マネ?」
「あんな声が、出せるようになりたいんだよ」
「なんで」

 つい、もう一度訊いてしまっていた。
 するとアヴェイラは焦れたようにこちらに向き直り声を荒げた。