アヴェイラはこちらを振り返ると、言った。

「お前たちはもう行っていいぞ」
「え!?」
「お頭!?」

 彼女の言葉に海賊たちは皆素っ頓狂な声を上げた。

「いや、しかしお頭とこの女を二人きりにするわけには……っ」

 そう言った海賊の一人が途中で言葉を切った。アヴェイラが彼を鋭い目つきで睨んだからだ。

「お前たち、あたしを見くびってんのか?」
「そ、そんなことは……」
「なら今すぐ持ち場に戻んな!」
「へい!!」

 アヴェイラがよく通る声で怒鳴ると私に剣を向けていた海賊たちは一斉にどこかへ去って行ってしまった。少しだけ肩の力を抜く。

「まったく……入んな」

 その声に前を向くとアヴェイラが部屋の扉を開けこちらを見ていた。
 ――彼女は私のことを「同じ術士」と言った。仲間意識を持ってくれているのだろうか。

(わからないけど、いざとなったら……)

 私は覚悟を決めてその部屋に足を踏み入れた。