私はそのまま暗い海へと格好悪く落下しブクブクと一度沈んで、しかしすぐに顔を出した。海面近くまで降りていたお蔭で、それほどの衝撃はなく済んだのだ。
「げほっ、ごほッ!」
それでも海水を口からと鼻からも少し飲んでしまって苦しくて咳き込みながら私は必死にフィル君の方へ泳いでいく。
「フィルくん! 大丈夫!?」
「カノン、姐さん……?」
彼はそう小さく答えてくれたけれどかなり衰弱しているように見えた。彼はこの冷たい海の中に一体どれくらいいたのだろう。早く船に戻って身体を温めてあげないと危険だ。
「私に掴まってフィルくん。皆のところに戻ろう!」
手を伸ばし精一杯の笑顔で言うとフィルくんはその手をすぐに掴んでくれた。――歌う姿を見られてしまって拒否されたらどうしようと少し心配だったのだ。



