(フィルくん、どこ……?)

 船を中心に少しずつ少しずつ範囲を広げていく。
 必死に見開いている目の中に、拭っても拭っても雨水が入ってくる。
 時間が経つにつれて高まっていく絶望感。
 でも諦めない。絶対に諦めたくなかった。

(お願い。フィルくん。無事でいて……!)

 強く願いながら私は歌い続けた。


 ふと、視界の端に波とは違う動きのものを見た気がした。
 祈るような気持ちでそちらへと向かう。そして。

「フィルくん!」

 波にもまれながらもこちらに力なく手を振る彼の姿を見つけ、私は思わず叫んでいた。
 途端、ガクンっと私の身体は重力に従い、しまったと思った時には遅かった。

「――ッ!!」