「やぁ、カノン。久しぶりだね。また会えて嬉しいよ」
「な、なんで……」
「彼に何度も何度もしつこく呼び出されてね、この一年ずーっと歌の練習に付き合わされていたんだ」
やれやれともう一度溜息を漏らすエルネストさん。
「うるせぇな。お前だって楽しんでたじゃねぇか」
「ラグが、歌を……?」
信じられずにその顔を見上げると、ラグは照れくさそうに視線を逸らした。
「仕方ねぇだろうが。それしか方法がなかったんだ」
エルネストさんがくすくすと笑う。
「そう。彼は記憶を取り戻すために、そして君に会うために、懸命に努力して歌導術を習得したんだ。彼はもう立派なセイレーンだよ」
――ラグが、セイレーン?
「もういいからお前は消えろ」
「先生に対して酷い言いぐさだなぁ。まぁ、仕方ないか。じゃあね、カノン」
もう一度笑顔で手を振って、彼の姿はふっと消えてしまった。
……彼はあのとき、僕の意識はずっと残ると言っていたけれど。
(本当だったんだ)
嬉しいけれど、なんだかちょっと拍子抜けしたような気持ちで彼が今まで立っていた場所を見つめる。



