空気が変わった気がしてゆっくりと目を開けると、そこは誰かの部屋の中だった。
小さなテーブルと椅子と、ベッドと棚しかない閑散とした部屋。
大きな窓からは柔らかな日の光が差し込んでいて。
見上げると、すぐそこに何度も夢に見たあの深い青があった。その額にあの布はなくて、少し違和感があるけれど、彼に間違いなくて。
「ラグ……?」
これが現実かどうか確かめたくて、もう一度その名を呼ぶ。
すると彼の顔が急にくしゃりと歪んで、次の瞬間私は強く抱きしめられていた。
――やっぱり、これは夢なんだろうか。
(なんで私、ラグに抱きしめられてるの……?)
痛いほどの力に戸惑う。
だって彼は、私のことを忘れてしまったはずなのに。
私が、忘れさせてしまったはずなのに。
頭がついていかなくて、理解が出来なくて。
でもその確かな温もりに、勝手にじわりと涙が溢れてくる。



