My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】






 空気が変わった気がしてゆっくりと目を開けると、そこは誰かの部屋の中だった。
 小さなテーブルと椅子と、ベッドと棚しかない閑散とした部屋。
 大きな窓からは柔らかな日の光が差し込んでいて。

 見上げると、すぐそこに何度も夢に見たあの深い青があった。その額にあの布はなくて、少し違和感があるけれど、彼に間違いなくて。

「ラグ……?」

 これが現実かどうか確かめたくて、もう一度その名を呼ぶ。
 すると彼の顔が急にくしゃりと歪んで、次の瞬間私は強く抱きしめられていた。

 ――やっぱり、これは夢なんだろうか。

(なんで私、ラグに抱きしめられてるの……?)

 痛いほどの力に戸惑う。
 だって彼は、私のことを忘れてしまったはずなのに。
 私が、忘れさせてしまったはずなのに。
 頭がついていかなくて、理解が出来なくて。
 でもその確かな温もりに、勝手にじわりと涙が溢れてくる。