船内の薄暗い階段を下りながら後ろのセリーンを振り仰ぐ。

「ありがとう、セリーン」

 するとセリーンはふっと笑った。

「意外と本気だったみたいだな」
「うん……びっくりした」

 笑おうとして、うまく笑えなくて前に向き直ると、視界に白いものが映った気がした。

「ブゥ?」

 階段下からブゥがふよふよと飛んできて、その先の暗がりに長身の人影があってぎくりとする。

「ラグ……!」

 彼は壁に寄り掛かり睨むような目つきでこちらを見上げていた。

「なんだ貴様、盗み聞きか?」

 セリーンが呆れたふうに言うとラグは壁から離れ鼻で笑った。

「誰がだ。そっちに用があって上がろうとしたら勝手に聞こえてきただけだ」

 言いながらラグが階段を上がってくる。