そのまま坑道の方へ向かおうとしたアジルさんの前にグリスノートが立ちはだかる。

「今あんたに出てかれると面倒そうなんでなっ!」

 そう言って彼はアジルさんの鳩尾に拳を叩き込んだ。
 小さく呻いてその場に倒れたアジルさんを横目で見て、エルネストさんが冷たく笑う。

「真実を偽っておいて、偽りの伝説を信じるなんて、どこまでも醜いね」

 そして再び彼の視線が戻ってくる。

「ごめんね、カノン。これまで辛かったろう。歌が好きな君にとって、この世界は本当に苦痛だったよね。だからもう、こんな世界終わらせよう。今の君になら僕の楽譜がなくてもそれが出来るはずだ」
「!?」

 皆の視線が私に集中する。

「無駄に長引いてしまった曲に、君が終止線を引くんだ。何も気にすることはないよ。ただこの世界の伝説の通りになるだけだからね」