「なんでラグだったんだ」

 アルさんが低く問う。
 エルネストさんは綺麗な笑みを浮かべたまま答えた。

「カノンにこの世界を見てもらいたくてね、でもひとりじゃ流石に心許なかったから、その護衛として彼を選んだ。彼には悪かったけれど、うってつけだったのさ」
「うってつけ……?」

 アルさんの声が更に低くなる。

「うん。彼はこの世界から愛されているのに、この世界に絶望していた。そんなところが僕に少し似ていたのもあって、とても扱いやすかったんだ」
「随分な言われようだな」

 セリーンが不愉快そうに呟く。
 私はそれよりも、ラグが世界に絶望していたというその言葉に胸が痛んだ。

「それに、傍にブゥがいたからね」
「ブゥ?」

 急に出てきたその名前に思わず声が出てしまっていた。