My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】


 はっきり断るとグリスノートはムスっとした顔をして言った。

「誰か、待ってる男でもいんのか?」
「そ、そんなんじゃなくて、でも、家族が私の帰りを待ってて」
「家族? ならこの船で報告しに行きゃいいじぇねぇか。俺の嫁になったってよ」

 グリスノートが鼻で笑いながら簡単なことのように言う。

「船で行けるような場所じゃ……」

 だがそこまで言って、これ以上はまずいと気づく。

「あ? どこだよそこは」

 案の定そう訊かれてしまい、私は慌てる。

「っていうか、お嫁さんになってくれるなら誰でもいいんですか!?」

 口に出しながら、なんだかまた腹が立ってきた。
 この人はお嫁さんを……結婚をなんだと思っているのだろう。
 結婚は愛し合っているふたりがするものだ。出会って間もなく、好きかどうかもわからない相手とするものではない。……少なくとも私はそう思っている。

 だが彼は「はぁ?」と首を傾げた。

「誰でもいいわけねぇだろ。俺はカノンがいいって言ってんだ」
「!?」

 不覚にもドキリと胸が鳴る。