「改めて言うのもなんなんだが、そういやちゃんと伝えてなかったなと思ってよ」
「アヴェイラのことですか?」
私が言うと、グリスノートは「は?」と間の抜けな声を出した。
「アヴェイラ? いや、なんであいつの名前が出てくんだ」
「だって、女の子なんて聞いてなかったですし」
「あー、いや、そうだけどよ。今あいつは関係なくてだな」
「?」
珍しく歯切れの悪い彼を見て首を傾げる。
なら一体なんの話だろう。他に彼にとって『大事な話』というと、セイレーンの話……?
そこまで考えてハっとする。
(まさか、私が銀のセイレーンだってバレた……?)
しかし船に乗っている間バレるようなことをした覚えはない。だとしたら船に乗る前……?
グリスノートが思い切るようにして口を開き、私は思わず一歩後退っていた。
「カノン、俺の嫁になって欲しい。勿論ふりじゃねぇ。俺とこれから一生添い遂げてくれねぇか」
「…………へ?」
一拍、いや、たっぷり三拍ほど開けて、私の口から先ほどの彼以上に間抜けな声が漏れていた。



