ぐいと強く後ろに引っ張られて、顔面スレスレを鋭い爪が掠めていった。
 そのまま私はバランスを崩し先ほどまでラグが座っていた椅子を盛大に倒して尻餅をつく。

「何ぼーっとしてんだ、立て!」

 次々襲い掛かってくるモンスターとその小さな身体で戦いながらラグが怒鳴る。それでも私は倒れたまま動けなかった。

「私だ」
「はぁ!?」

 ラグがまた一匹モンスターを愛用のナイフで切り裂くのを間近で見ながら、私はもう一度呟く。

「私の、せいだ」

 ――なんで、今の今まで気づかなかったのだろう。

 昨夜モンスターたちが私たちの泊まる宿に集まってきた時、なんで自分が原因だと思わなかったのだろう。……いや、私とラグのどちらかが原因だとそこまでは考えたのに、どこか無意識に私が原因であるはずがないと思い込んでいたのだ。