「いや、なんであんたも一緒なんだよ」
甲板に出た私たちを見て、開口一番グリスノートはそう言って肩を落とした。その肩に先ほどまでいたグレイスはいない。
「ふん、私はカノンのナイトだからな」
セリーンが鼻を鳴らしそう返すと、彼ははぁと大きく息を吐いた。
「まぁ、いいけどよ」
諦めたように彼は頭をかいて、ぼそっと続けた。
「ムードが台無しだぜ。折角いい月の夜だってのに」
(月?)
見上げると、確かにキラキラと輝く星空にまん丸な月がぽっかりと浮かんでいた。どうりで夜なのにこんなにも明るいわけだ。
心地よい風が頬を撫でて、その夜気をゆっくりと吸い込む。
「カノン」
呼ばれて視線を下すと、グリスノートがなんだか真剣な顔つきで私を見ていた。



