皆の視線がこちらに集中して、その中には勿論マルテラさんの目もあって、顔が真っ赤になるのがわかったけれど私は必死に続ける。

「わ、私たちこの街に来る前に、丁度その人に襲われて」
「え!? 大丈夫だったのかい?」

 驚いたパシオさんに大きく頷く。

「全っ然大丈夫でした。ほんと、びっくりするくらい弱くて、あれは本当にただの野盗です。自分はラグ・エヴァンスだって嘘ついて威張ってるだけの」
「いや、だがいくらなんでもタイミングが合いすぎないか?」
「だよなぁ」
「ラグ・エヴァンスって今いくつくらいだ? 当時まだ子供だったんだろう?」
「なら今は20歳かそこらか?」

 どんどん話がマズい方向へと進んでいく。
 すぐ後ろにラグ本人がいるのに。

(どうしよう、このままじゃ……)

「ラグ・エヴァンスがモンスターたちを操っているとでも言うの? 流石に現実的じゃない気がするわ」

 そのとき、肩を竦め言ったのはマルテラさんだった。意外な助け舟に驚く。

「だが奴は魔導術士だろう。そのくらい出来るかもしれないじゃないか」

 否定された青年がそう返すが、マルテラさんは冷静に続けた。

「じゃあ、なんのためにこの街を襲わせてるの? 今更、彼に何のメリットもない気がするけれど」
「それは、そうだけどよ……」
「まぁまぁ」

 そんなふたりの間に入ったのはパシオさんだった。

「一応ラグ・エヴァンスのことは頭に置いておこう。確かにこのタイミングは気になるし、彼女の言う通りただの野盗かもしれない。だが余計な不安を煽らないように、このことはくれぐれも他の者には」
「それより、私はやはり先ほどの立ち入り禁止の先が気になる」

 パシオさんの話を遮ったのは私の隣に立ったセリーンだ。

「お前たち自警団が手を出せないというなら、私が個人的に調査するが構わないか?」