「あれは暗に俺たちに鉱山に立ち入るなってことだよなぁ」

 詰所の中からそんな溜息交じりの声が聞こえてきた。
 中を覗くとパシオさんとマルテラさん以外の団員たちは皆疲れ切った様子で椅子に力なく腰かけカウンターに突っ伏してしまっている人もいた。

「だから言ったでしょ。暗にも何も、そういうことよ」

 マルテラさんも腕を組み重い溜息を吐いた。

「昔から、鉱山で働く男たちはああいう気質なのよ。俺たちには俺たちのやり方がある。手出しも口出しもするなってね」
「……仕方ない。今日はもう一度例の穴の方へ行ってみるか」
「でも、あそこから入るのは本当に危険だと思うわ」

 パシオさんが言葉を詰まらせたときだった。

「あ、あのさ」

 そう言いにくそうに口を開いたのは、昨日は見なかった気がする青年だった。 

「俺、昨日グストの町で聞いたんだけどな、今この近くにあのラグ・エヴァンスが来てるらしいんだ」
「!?」

 途端、その場にいた皆の顔色が変わり息が止まるかと思った。

「なんでも野盗まがいなことをしていて、本物かどうかは怪しいらしいんだが」

 それを聞いて、ほっと胸を撫でおろすと同時にまたあの野盗たちのことだと怒りがわいてくる。
 その青年は神妙な顔つきで続ける。

「でももしそれが本物だとしたらよ、モンスターたちの狂暴化はそれが関係しているんじゃないか……?」
「違います!」

 思わずそう叫んでしまっていた。