するとパシオさんは腕を組みうーんと首を捻った。

「歌かぁ……僕がこのレーネに来たのはあの悲劇の後だからなぁ。マルテラなら何か知っているかもしれないけれど」
「あ、マルテラさんにはもう昨日訊いて、知らないと言われてしまったんです」
「あぁ、そうだったのかい」
「宿の主人には、この街に一番詳しいのはアジルという男だと聞いてな。この後訪ねてみようかと思っているのだが」

 セリーンがそう続けるとパシオさんはまた数回瞬きをした。

「アジルさんなら丁度この後ここに来る予定ですよ」
「えっ」

 思わず声を上げるとパシオさんは笑顔で言った。

「今日鉱山の調査に行くだろう、その打ち合わせをここでするんだよ。アジルさんはそこの責任者だからね」

 そういえば鉱夫たちをまとめている男だと宿の主人が言っていたのを思い出しながら、私たちは顔を見合わせた。