「お前がいれば、大丈夫だ」
「!」

 さらっと穏やかな目をして言われて不覚にも胸が跳ねる。
 一気に顔に熱が集中するのがわかって、慌てて口を動かす。

「そ、そっか。セリーンもいるしね! えっと、じゃあ朝ご飯食べに行こう!」

 私はそそくさと回れ右をして階段へと向かった。

(び、びっくりした……)

 昨夜といい、気持ちを自覚してから彼のこういう言動は頗る心臓に悪い。

 ――ありえないとわかっているのに、同じ気持ちだったら……なんて、淡い期待を抱いてしまう。

(いやいやいや、ないないない)

 階段を下りながら小さく首を振る。
 彼にとって私は呪いを解くのに必要な存在。ただそれだけだ。――そう改めて自分に言い聞かせる。
 昨夜セリーンが言っていたように今の彼は精神的に相当参っているから、だからこんな私でも頼りにしてくれているのだろう。

(それだけでもう十分だよ)

 と、彼がドアを閉め私に続いて階段を下りてくるのがわかって、顔の赤みが引いているか確かめるためにそっと頬に手を当てた。