「私声かけてから行くね」

 ラグの部屋の前で言うとセリーンはわかったと先に階段を下りて行った。
 小さく深呼吸してからドアをノックする。

「起きてる?」

 すると間もなくしてガチャとドアが開いた。現れた彼はもう出かける格好になっていて。

「おはよう。眠れた?」
「こいつは明け方に眠った」

 そうしてラグは横を向き後ろ髪を指さした。翼で自分を抱きしめるようにして逆さにぶら下がったブゥが見えてほっとする。

「そっか、良かった」

 でも、こいつ「は」ということはラグはやはりあのまま眠れていないのだろう。

「あのね、セリーンと話したんだけど、例の男の人のとこへは私たちだけで行こうかなって」
「いや、オレもいく」

 即答されて戸惑う。

「え、でも」
「まず詰所に行くんだろ。オレが別行動した方が怪しまれる」

 小声でそう続けたラグ。

「そうかもしれないけど、その……大丈夫なの?」

 昨夜あんなに辛そうだったのに。
 そう胸の内で続けながら訊くと、彼は小さく息を吐いて頷いた。