「あぁ、行ってしまった……」
「た、多分、ラグ皆に見られたくないと思うんだ」
寂し気に船内への扉を見つめているセリーンに今更ながらそう言うと、彼女はふぅと溜息を吐いてからこちらを向いた。
「そうだったな。あの子は恥ずかしがり屋だものな」
ハハハと苦笑していると、今度はグリスノートの溜息が聞こえた。
「流石の威力だが、一度しか使えねぇってのがなぁ」
「まぁ、でもこれで進めるじゃないッスか」
「大丈夫かしら、アヴェイラたち……」
船縁に手をかけ海賊船が消えていった方を心配そうに見つめているリディに私は声を掛ける。
「大丈夫だと思う。ラグの術は優しいから」
「そうなの?」
「うん」
自信たっぷりに頷くが、リディはもう一度水平線の向こうを見つめた。
「――というか、あれ使えばこの船ももっと早くヴォーリア大陸に着くんじゃないっスか?」
コードさんが呑気な声でそんなことを言ったが、誰も同意しなかった。



