「向こうの友達と話せたの。手を差し伸べられて、でも私その手を掴めなくて……」

 自分の両手を見つめながら続ける。

「その手を掴んでいたら、帰れたかもしれないわけか」
「……まだわからないけど、もう一度歌ってみるのもなんか怖くて」

 セリーンが小さく息を吐いた。

「そうだったのか。……そのことを奴には」

 首を横に振る。

「言ってない。なんか、言い出しづらくて」

 ……多分、彼の反応が怖いのだ。
 もし、ならさっさと帰れなんて言われてしまったら――。

「ならカノンは今、奴のためにこの世界にいるのだな」

 その優しい声に私は目を見開く。

(ラグのために、ここにいる……?)