「気づいたのはほんとついさっきでね、自分でもびっくりなんだけど」

 笑って誤魔化そうとするけれど全然だめで、結局顔を上げていられなくなってしまった。

「でもっ、だからってどうにもできないのは自分でもわかってて、なんで今になって気づいちゃったんだろうって……」

 吐露した気持ちと一緒にぼろぼろと涙が零れ落ちていく。 

「だって私は、帰らなきゃいけないのに……っ」

 そのときあったかい温もりに包まれて、セリーンに抱きしめられたのだとわかった。

「そうだな、辛いな」

 私の頭を優しく撫でて彼女は言った。

 ――辛い?

 その感情がすとんと心に落ちて、じわりと広がっていく。

 ……そうだ。
 せめて傍にいられる間は彼の役に立ちたいだなんて、嘘。
 そんなの、ただの強がりで……。

 私は彼女の腕の中で頷く。

「うん、辛い。ほんとは、もっと一緒にいたい。まだ帰りたくない。なんで私は、この世界の人間じゃないんだろう……っ」

 小さな子供みたいに泣きじゃくる私を、セリーンはただうんうんと頷きながら静かに受け止めてくれていた。