色んな感情がごちゃまぜになって、私はもうひとつのベッドに腰を下ろした。

「だって、私は帰らなきゃいけないのに」

 銀のセイレーンだとバレたということは、私が異世界から来た人間であることもわかったはずだ。なのに。

「帰らなきゃ、か」
「え?」

 顔を上げるとセリーンが優しく微笑んでいた。

「何か心境の変化があったみたいだな」

 全て見透かされているような台詞にドキリとする。
 でも、セリーンにこの気持ちを話してしまっていいだろうか。
 呆れられたり、否定されたりしないだろうか。

(ううん、セリーンはそんなことしない)

 私は膝の上でぎゅっと拳を握って、こちらを見つめる彼女をまっすぐに見返した。

「あ、あのね、実は、私……ラグのこと好きになっちゃったみたいなんだ」

 そう口にした途端だった。
 なぜだか急に涙が溢れてきてセリーンの顔がみるみるぼやけていく。