「ダグ、ありがとう。全然気づかなかったよ」
「いや」

 パシオさんのお礼に短く答え、ラグはピクリとも動かなくなったモンスターの元へ行き愛用のナイフを引き抜いた。
 そんな彼を、マルテラさんがじっと目で追っていた。



 そうして私たちがレーネの街に戻ったときには空は綺麗なオレンジ色に染まっていた。
 一見穏やかに見える街並みにほっと息を吐いていると、パシオさんが笑顔でこちらを振り向いた。

「皆さん、本当にありがとうございました。今日はこちらで宿を用意させてもらいますので、ゆっくり休んでください」
「それは有難い」

 セリーンがそう答えるのを聞いて、どきりとする。
 先ほど調査が終わったらすぐに街を出ていくと、ラグはマルテラさんに話していた。
 マルテラさんはパシオさんのすぐ後ろを歩いていてこの会話が聞こえていないはずがない。
 元々この街に長居するつもりはなく今夜も本当は野宿するつもりだったけれど……この森の中で野宿するのは正直恐ろしかった。――と。

「そうね。貴方たちがいたお蔭で皆無事だったし、本当にありがとう」

 そう言ってこちらを振り向いたマルテラさんはにっこりと笑っていた。