確かに森に入った頃よりも視界が悪くなってきていた。
 モンスターが狂暴化している森の中で夜になってしまったら、考えただけでぞっとする。

「狂暴化の原因は森の中ではなく、この鉱山の内部にあるということはないか」
「え?」

 セリーンの言葉に皆が声を上げた。
 ――鉱山の内部?

「……ありえなくはないな」

 パシオさんが口元に手を当て眉を寄せた。
 その隣にいた男の人も深刻そうな顔で言う。

「だとしたら、鉱山で働く連中も危なくないか」
「あぁ。街に戻って皆にこのことを伝えよう」

 パシオさんの言葉に皆真剣な表情で頷いた。――そのときだった。

 ドズっと鈍い嫌な音がした。

(え?)

 そちらに視線をやれば、パシオさんたちのすぐ背後で蛇のように長い身体の生き物が力なく草むらに倒れ込んだ。

「え?」

 パシオさんたちの呆けたような声が重なる。
 小さく痙攣しているそいつの頭に、見覚えのあるナイフが突き刺さっていた。

「危なかったな。新手がいたのか」

 セリーンが息を吐いて、漸く事態が飲み込めた。先ほどとは別のモンスターがパシオさんたちを狙って背後から忍び寄っていたのだ。
 そしてそれにいち早く気づきナイフを投げたのが――。