でも、マルテラさんは皆の前でラグのことを言うつもりはないようだ。
 ……ラグを恨んだりはしていないのだろうか。

「彼女は?」

 その視線が私に来て、思わず背筋を伸ばす。

「あ、私は華音と言います」

 自己紹介をして頭を下げる。

「カノンね。よろしく。えっと、貴方たちはなんでこの街に?」
「そんなの決まってるよなぁ!」

 自警団の人たちと話し込んでいた例の男性が急に大きな声で会話に入ってきた。
 その人がにんまりと笑って続ける。

「目当ては《誓いの指輪》だろ?」

(誓いの指輪……?)

 聞き返しそうになって寸でのところで抑える。この場で下手な反応は出来ない。

「そう、なの?」

 マルテラさんが少し驚いた様子で私とラグを交互に見つめる。