(なら、せめて――)

 ここにいられる間は彼のために出来ることをしたい。彼の役に立ちたい。
 ラグのそばにいたい。
 あとどのくらいこの世界にいられるかは、わからないけれど……。

「もう街に入る」
「え!?」

 急に声がかかってびっくりする。
 彼がこちらを振り返った。

「いいな、オレの名前は絶対に出すなよ」

 目が合って、それだけでどきりと胸が跳ねる。

「う、うん! わかってるよ!?」

 お蔭で声が思いっきりひっくり返ってしまった。
 と、私の態度がおかしいことに気付いたのだろう。
 訝しげに眉根を寄せて彼は足を止めた。

「お前、」
「な、なに?」

 彼がこちらに戻ってくる。
 青い瞳が私をじっと見つめて、それからその大きな手が伸びてきて私の頬に触れた。

(ひぇっ!?)

 心臓が、飛び出るかと思った。