「だから全部、この森も全部消えたものと思っていた」
「……っ!」

 やっと、彼が何に驚いているのかわかった。
 以前、彼はレーネの森のことを『オレが消した』と話していた。レーネの街と共にこの森も消してしまったのだと。
 でも、消えてはいなかったのだ。こうしてこの森はもう一度芽吹いてくれたのだ。
 ここに来てそれがわかって、きっと彼は今とても嬉しいのだろう。その表情からはわかりにくいけれど、すごくすごく嬉しいのだろう。

「良かったね」

 私が言うと彼がこちらを見た。

「良かったね、ラグ」

 笑顔で言うと、彼は珍しく否定したりせずに頷いてくれた。

「あぁ」

 そうしてもう一度眩しそうに木々を見上げたラグを見て、あぁ、好きだなぁと思った。

(私、この人が好きだなぁ)

 自然にわき上がった気持ちに少し驚いたけれど、でももう抵抗したりしなかった。
 不思議なくらいにすんなりと、このとき私はその気持ちを受け入れることが出来た。