あのとき返せなかった言葉を返すことが出来たのだ。なのに、全然すっきりしない。むしろ胸がズキズキと痛くて彼の顔を見ることが出来なかった。

「……そうか」

 ラグが低く呟くのが聞こえて、そのときブゥが彼の方へ飛んでいくのが横目に見えた。そんなブゥを目で追いながら、私はもう一度口を開く。

「ラグは、私が帰ったら少しは寂しがってくれる?」
「は?」

 その目が大きく見開かれる。

 ……何を言っているのだろう。
 そんなことを訊いて、彼が寂しいなんて言ってくれるはずがないのに。

「――わ、私は寂しいんだ。帰りたいけど、ラグやブゥやセリーンとお別れしなきゃいけないのは、すごく、寂しくて」
「それでも、帰るんだろ」
「そ、そうだけど……」

 結局また顔が見れなくなってしまった。
 ――やっぱり、こんなこと言うんじゃなかった。
 感情がぐちゃぐちゃで、なぜか涙まで溢れてきて――。

「もし、オレが帰るなと言ったとしても、お前は帰るんだろ」
「え?」

 視線を上げると、驚くほどまっすぐに向けられた青い瞳とぶつかった。